現役の自動車メーカー設計者が解説します。
【結論】全然暇じゃない
結論、全然暇ではありません。
新型車開発には想像以上の数年がかかります。
新型車の開発は、開発の規模によりますが2〜4年ほどかかります。
変更規模の小さい開発でも2年はかかります。
変更規模が大きくなりフルモデルチェンジなどになれば4年以上かかります。
開発終了後、工場側の量産準備などがあり、
実際に販売されるのはさらに半年後くらいです。
開発に時間がかかる理由
開発に時間がかかる理由について解説します。
設計して試作品を作る
設計が要する時間については以下の通りです。
実際は部品によって大きく異なりますが平均的な部品の例になります。
- 仕様検討・図面作成 1〜2ヶ月
- 試作品製作 3〜4ヶ月
評価する試作品を準備するだけで通常半年ほどかかります。
そのためやり直しリスクも大きいです。
評価する
ここでは耐久試験を例にします。
耐久試験は長い試験の場合、半年以上走らせたりエンジンを回し続けたりする試験があります。
評価がNGになったり設計変更が入るとやり直し業務なってしまいます。
量産部品の準備
量産部品の準備も想像以上の時間を要します。
量産用の型を作ることが最も時間を要します。
こちらも部品によりますが、1年くらいかかるものが多いです。
必ず不具合が起きる
開発中は必ずと言っていいほど不具合が起きます。
不具合が起きるとやり直しが発生し、さらに日程が大きくかかってしまいます。
同じ車型でもバリエーションの数だけ仕事がある
一言で”新型車”と言えど、バリエーションの数だけ仕事があります。
カタログに載っているバリエーションの数だけでも多くのバリエーションがありますが、
さらに各国で法規の違いなどにより設定されている仕様が違ったりします。
数多の仕様をがある中で
- 設計はそれぞれの部品を設計
- 実験は全仕様を評価(もしくは厳しい条件を見極めて評価)
する必要があります。
また、開発中は不具合が出た際にはやり直しを極力防ぐために
評価してきたことが無駄にならないか?などの検討し日程のリカバリーが必要になります。
新製品以外の仕事もたくさん抱えている
設計は新製品の部品だけを抱えているわけではありません。
市場で起きた不具合の対応
自分の担当部品が市場不具合を起こすと非常に忙しくなります。
新型の仕事と同等もしくはそれ以上の優先度での対応が必要になります。
販売開始した製品の改良
現行生産中の部品などの仕事も多いです。
販売当時に日程・品質を守るために
その他のコスト/製造性/組立性などに課題が残っている部品に関する仕事です。
いわば借金です。
数年の開発期間を要しても開発を完成させることができていないことがほとんどです。
新型車や市場不具合ほど優先度を上げる風潮はありませんが、
コストや製造性への影響があるので一刻も早い対応が望まれます。
まとめ
新型車の開発にかかる年数について解説しました。
新型車の開発には2〜4年ほどかかります。
年数がかかる主な要因は
- 設計が検討して試作品を作る;最大半年
- 実験が評価する;最大1年
- 量産品の準備;約1年
- 不具合によるやり直し
他にも
- バリエーションが多く、部品設計・評価の時間がかかる
- 現行生産中の設計業務も対応が必要
などがあります。
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